画像処理により判別を実施する際は、目視判別の際に人が行っている製品の取り出しや配置、判別面が見えるように目を向けたり、目をこらす、更には判別結果に応じて仕分ける、といったプロセスをどのようにするべきなのか、代替手段を検討することが重要となってきます。この機能を担うのが「製品のハンドリング技術」です。製品のハンドリング技術は、生産ラインや製品トレーからの製品の取り出し、撮像のためにカメラの前への搬送、カメラと製品の最適な位置決め、そして不良品を検知した際の排出や仕分けなど、画像処理システムの活用に必要不可欠な技術です。ここでは、これらの技術について「撮像のための製品やカメラの位置制御」と「製品の搬送・仕分け」に分けて説明します。

1. 撮像のための製品やカメラの位置制御

画像処理判別で正しい検査を行うためには、目視判別による検査において人が不良を見つけるために製品を様々な方向から確認しているのと同様の操作を行う必要があります。この操作は、大きく分けると「光の当て方を最適化する」と「検査面の死角を無くす」の2つの要素があります。

(1) 光の当て方を最適化する

位置制御における一つの要素が、「どのような角度で製品表面に対してカメラと照明を向けるか」という点です。「画像取得に関わる技術の3.照明について」でも触れていますが、何を判別したいかによって、カメラ、製品、照明の最適な位置関係は異なります。カメラが製品を透過した光を捉えるのか、反射した光を捉えるのか、照明は製品に近い方が良いのか遠い方が良いのかなど、状況に応じて最適な方法を検討します。

(2) 検査面の死角を無くす

位置制御におけるもう一つの要素が「製品の判別範囲を抜け漏れなく撮像する」ための制御方法の検討です。例えば、製品が平坦な板状で検査面が片面のみの場合は検査面を正面から撮像すれば抜け漏れなく判別できます。一方で、例えば立方体状の製品で且つ6面の全てが検査面だった場合、6面の全てを検査するには以下の点について検討が必要です。
• 立方体の6面に対して真正面から6枚の画像を撮像する必要があるのか、それとも斜め上から撮像し3面ずつ2枚の画像を撮像すれば良いのかの検討
• 判別に利用可能なサイクルタイム、設備投資の許容金額、前後の搬送の有無等を考慮した上で、製品を動かすのか、カメラを動かすのか、カメラの台数を増やすのかの検討

「光の当て方を最適化する」と「検査面の死角を無くす」は相互に影響する内容です。多くの場合は、制約条件が多い(=選択できる範囲が狭い)「光の当て方の最適化」を検証し、その上で「検査面の死角を無くす」ための制御方法を検討します。一方で、そもそも画像処理による不良の検出ができなければ製品やカメラ位置の制御の検討を行っても意味がありません。そのため、まずは「画像内に写っている不良を画像処理により検出が可能か」を確認した上で製品やカメラの位置制御の検討を進めることが一般的です。

2. 製品の搬送・仕分け

画像処理による外観検査を実施する前、検査の前後の製品の搬送、仕分けをどのようにして実施するのかがポイントになります。勿論、人の手で実施することも可能ですがハンドリング自動機の導入もひとつの検討事項となります。その際に考えるべきは、「自動化の範囲」「サイクルタイム」「設備投資コスト」です。自動化の範囲を広げるほど、設備投資額は増えますが人による関与を減らせます。また、自動化の範囲を広げるとサイクルタイムは自動化により安定します。一方で、サイクルタイムが短くならないあるいは投資が重すぎるといったことも出てきますので慎重な検討が必要です。

<搬送・仕分け手段の検討項目>

(1) 工程内検査か、工程外検査か

工程外検査の場合、生産ラインとは別に検査するスペースが設けられ、そのスペースに運び込まれた製品を画像処理システムにより判別する形となります。そのため、搬送・仕分を検討する際は、製品形状やストック方法にあわせた取出、画像処理システムへの搬送、判別結果に応じた仕分け、製品の排出等を検討する必要があります。一方、搬送コンベアやロボット等が導入されている自動化ラインの中に新たに画像処理システムを組み込む場合、既設の設備の制御と連動するよう、画像処理システムを導入していくことが必要となります。いずれの場合も、画像処理判別システムの導入目的、現状の作業内容やサイクルタイム、設備投資可能額を考慮した上で、どこまで自動化するのか対象とする範囲を決定し設計する形となります。

(2) 人か、自動機か

さまざまな検討の結果として、画像処理システムによる判別を行う場合に、必ず搬送や仕分の自動化が必要というわけではありません。例えば、人による搬送・仕分を行う場合、良否判別の機能のみを画像処理システムに任せ、判別結果を人が確認することで、検査者は従来の目視判別と同様の操作とすることが可能です。自動化の範囲を判別機能のみとすることで、目視判別の弊害である「判別のブレ」を回避しつつ、設備投資を抑制して画像処理システムを導入することができます。
一方で、自動機による搬送・仕分を行う場合、画像処理による判別精度の安定化に加えて、省人化・無人化が考えられること、判別速度の安定化ができることが効果として期待できます。

3. まとめ

製品のハンドリング技術は、画像処理システムの能力を最大限に引き出す上で重要な技術です。画像処理技術と製品のハンドリングの組み合わせにより、生産プロセスの最適化が実現され、品質や生産性の向上に貢献します。