画像処理技術を用いた外観検査は、「対象部品の有無や組付け間違い」、「形状に関する不具合」、「表面特性に関する不具合」、「印刷チェック・数量のカウント」等、目的に応じて様々な検査に使用できます。
ここでは、「形状に関する不具合」に使用する画像処理技術や判別事例について説明します。
また、製品に焦点を当てた「製品別画像処理による判別事例」もあわせて参照ください。
使用する画像処理技術
「形状に関する不具合」を判別する際は、AI、ルールベースのどちらの技術も使用する可能性があります。(AI、ルールベースについては「合否判別に関わる技術」を参照ください。)
但し、一般論として「ルールベースは不良を言葉で定義しやすい検査に向いており、不良の定義ができれば設定は比較的短時間でできる」、「AIは不良の定義が言葉で説明しにくい検査に向いており、設定には時間がかかりがちだが適用できる範囲は広い」という特徴があります。まずはルールベースによる判別が可能か検討をした上で難しい場合はAIによる判別を検討する、というプロセスを踏むことが大切です。
「形状に関する不具合」の判別を行う場合、ルールベースやAIの技術がどのような場面で適しているか参考にして頂けるよう、適しているケースを以下の表に示します。
ルールベースが適しているケース | AIが適しているケース |
---|---|
・形状を確認したい対象と周辺部の色や輝度の違いが明瞭 (例:対象は一つの部品で、周囲にものがない場合、等) ・判別の対象が常に同一の形状をしている (例:金型で形成された製品、等) ・角度や長さなど定量的な評価結果を得たい (例:端部間の距離や角度の判別、等) | ・形状を確認したい対象と周辺部の切り分けが難しい (例:部品とその背景の色が両方とも黒色で色の差が小さくて輪郭が明瞭でない、等) ・良品の形状に幅がある (例:ある程度の大きさや見た目が同じであれば良品である食品、等) |
判別事例
射出成形部品におけるショートショットの検出
射出成形部品では、金型の先端まで樹脂が流れず製品の一部が欠けてしまっている「ショートショット」と呼ばれる異常が発生します。特に金型の形状が複雑な場合や溶融粘度が高い状態で成型が必要な樹脂部品では発生しやすい不良です。
多くのショートショットは発生する箇所が特定されているケースが多いため、対象となる箇所がカメラの撮像範囲に収まるような位置関係でカメラ、照明、対象製品を設定することで検査が可能となります。また、ショートショットの検出を行う場合は、「どの程度寸法が不足していた場合に不良とするか」ルールベースのアルゴリズムを使うことで定量的に決めることが可能となります。
食料品の欠け検出
一言で形状の不具合といっても、食料品の場合は良品間で差がある場合が多くルールベースのアルゴリズムによる判別が苦手なケースの一つです。例えば、中心部に穴があいているドーナツを例にあげると、若干形状が楕円になっていたり、穴の位置が中心からずれていても良品とする場合が多い一方で、大きく円形状が歪んでいたり、サイズが小さかったり、穴が大きかったり、あるいは一部分が欠けていたりした場合は消費者心理を踏まえると異常と判別します。
そのような場合に活躍するのがDeep Learningを用いたAIによるアルゴリズムです。「これだけ穴がずれたら不良だ」「これは明らかに欠けているから不良だ」というように、人が感覚的に定義した良品と不良品の画像情報を元に定義した内容に一致する判別基準をAIが作成します
まとめ
形状の判別は、主に製造工程の上流側で特に検査が必要な内容です。ものづくりにおいて上流側になるほど時間あたりの要求検査数量が多くなりがちですが、現状はこれまでの経験に依存した属人的な検査となっているように見受けられます。
画像処理技術はこれらの目視検査で発生している人依存脱却に向けた強力なツールの一つです。判別したい内容にあわせて、最適なシステムを構築し運用することが人に依存した目視検査からの脱却と持続的な生産性向上には重要です。