目視検査は官能検査(人間の五感を使って判定する検査)の一種であり、人間ならではの柔軟性を生かした有効な品質管理の手段である一方で、「目視外観検査の課題」に記載したように、「人間だからこそ」というさまざまな課題があります。ここでは、これらの課題解決策として「性能検査」と「画像処理技術を活用した検査」という二つの代替手段をご紹介します。

1. 性能検査による判別

性能検査は、製品やシステムの性能が仕様や要求基準を満たしているかどうかを評価するために行われる検査です。例えば、目視判別の目的が製品のクラック有無の確認であれば強度の測定、色の確認であれば色差の測定で目視判別を置き換えることができる可能性があります。このように、性能検査では計測機を用いることによって合否判別のみならず、定量的なデータを残すことができるため、置き換えが可能であれば有用な判別方法となります。
一方で、性能検査は内容によって代表的な製品を量産品から抜き取り破壊試験を行うケースもあるため、全数検査が必要とされている目視判別検査の代替手段としては適応が難しい場合もあります。
また、目視判別の内容の全てを性能検査で充足できるか、といった点も目視判別の代替手段として性能検査を検討する場合は考える必要があります。

2. 画像処理技術を活用した判別

画像処理技術を活用した検査は、従来の目視判別における目の代わりにカメラやセンサーで製品を撮像し、その画像を人の脳の代わりにコンピューターで分析することによって、不良を見つけ出す方法です。
この技術は、主にX線や超音波などを用いて画像化する医療分野を主軸に、1980年代から活用されはじめました。その後、半導体部品の検査において、カメラで取得した画像を用いてコンピューターで解析しはじめたのが画像処理技術の活用のスタートです。
更に、2000年代に第二次AIブームとして着目され始めた「ディープラーニング」技術により、画像処理の技術は更に幅広い領域への適用が可能となりました。例えば、「自動運転に向けた人・物認識」、「カメラ内の人の動きや属性(年齢層・性別)を検知」できるようになった他、従来は判別が難しかった「製品の判別」が可能となりました。
一方で、進歩が目覚ましい画像処理技術であっても、どのような不良でも見つけられるのかというとそういうわけではありません。そもそも、見つけたい領域を画像として捉えることができなければ判別することはできませんし、狙った通りの判別を行うためには、画像処理のための条件設定を適切に行う必要があります。目視判別の課題、画像処理技術による判別の課題をそれぞれ理解した上で、どちらの手段が最適なのか、都度見極めながら検討を進めることが重要です。

3. まとめ

目視判別の代替手段として、「性能検査」や「画像処理技術を活用した判別」など、様々な技術を活用できる可能性があります。一方で、「この技術であれば目視判別を完全に代替できる」という万能な手段はなく、目視判別による判別内容や、発生している課題に応じて適切な代替手段の適用が重要です。