昨今、AIによる画像処理技術が至るところで紹介されるようになり、なんとなく「目視判別よりも画像処理による判別が良さそうだ」というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。ここでは画像処理システムの活用によるメリットについて、品質(Quality)・納期(Delivery)・コスト(Cost)それぞれの観点から説明します。
1.品質(Quality)
(1) 判別の安定化
従来発生していた人による判別結果のバラツキが抑制されます。
(2) トレーサビリティの確保
判別時に取得した画像データが残るため、トラブルやクレーム発生時における不良の発生起点の追跡が容易になります。
(3) 不良傾向の可視化による品質改善のきっかけ作り
判別結果をデジタルデータとして取得することで、不良の発生傾向の把握が容易になります。傾向の把握により、どこから不良を抑制するための対策を行うかの計画作成や、その他の生産ラインデータとの比較による不良発生の原因究明に貢献します。
2.納期(Delivery)の安定化
(1) 生産リードタイムの短縮
生産完了後に別室でオフライン検査を行っていた判別業務をインライン化することにより、工程を一つ削減できるため生産リードタイムの短縮に貢献します。
(2) 生産リードタイムの安定化
オフライン検査を目視判別から画像処理システムによる判別に置き換える場合においても、人で発生していた判別速度のバラツキがなくなるためリードタイムが安定化し出荷までの工程計画が立てやすくなります。
3.コスト(Cost)の削減
(1) 不良品の早期発見によるロス費削減
工程内で画像処理システムによる判別を行うことで、不良を早期に発見し、初期対応までの時間短縮が可能です。また、発生した不良が設備トラブルや材料などの影響で連続的に発生する不良だった場合、ロス費の削減につながります。
(2) 検査者の採用・教育コストと人件費の削減
目視による判別は、検査者の人件費といった目に見えるコストと、検査者の確保や教育といった、目に見えにくいコストが実際は発生しています。画像処理技術を用いることで、少なくとも検査者として必要な目視判別の技能は不要となる他、搬送や仕分を自動化することで無人化による人件費削減を目指すことも可能となります。
4. まとめ
画像処理技術の活用と自動化導入は、品質の向上、納期の安定化の実現に加えて低コスト化にも貢献し、市場競争力の強化につながります。特に、品質の向上は、費用対効果には表しにくいものの、中長期的には顧客からの信頼を大きく高め、長期的なビジネス関係の構築に貢献し、結果として受注機会の拡大や市場シェアの向上等、事業の拡大に寄与します。