「目視外観検査の目的と判別内容」で説明したように、目視による判別は品質保証の重要な要素です。製品の品質は企業の信頼性と直結しており、その品質を確保するためには、正確で安定した検査プロセスが不可欠です。しかし、目視検査には、さまざまな課題もあります。
1. 精度の正確性・安定性
人の目による検査では、細かい傷や微妙な色の違いを見分けるためには、製品表面への光の当て方、どの部分に不良が発生する可能性があるのか、良品として問題ない範囲はどの程度なのか、といった様々な点について、人が経験に則して工夫して検査を実施しています。疲労や体調不良、注意力の低下が判別結果に影響を与えることも避けられません。また、周囲の環境、検査者の習熟度、性格等の違いにより大きく影響を受けることも否めません。
2. 教育
目視検査には高いスキルと経験が求められるため、新たな検査員の育成には、長期間の教育が必要です。また、教育は検査指示書などの文書類によって体系的に学ぶほか、実際の製品を「見慣れる」ことによって良品や不良品の特性を経験知として蓄積する必要があります。このように正確な検査を行うためには検査者の採用活動から教育まで、目に見えにくいコストや時間が発生していることを認識する必要があります。
3. トレーサビリティ
目視検査では、人が目で見てその場で良品と不良品を識別するだけとなるため、データとして残るのは不良品の検出個数や種類のみであり、画像データ等の形式で保存ができていないことが大半です。そのため、不良品が後工程や顧客に流出したあと際に「本当に検査をしたのか」を追跡することは実質的に不可能となり「見落とした」と後工程や顧客から追求されても、実態を確認することは困難です。また、不良品の発生前後の製品状態や不良品の発生タイミング、発生時の生産条件等、様々なデータは、不良の発生原因を追及し、それを解決することで、歩留まりの改善となる可能性もありますが、検査者の目的は「不良品を確実に識別すること」に終始するため、不良再発の防止や抑制といった取組みとはなっていないケースが多く見受けられます。
4. まとめ
ここまでの説明の通り、目視による外観検査は「勤勉で労を惜しまない検査員の存在」を大前提としたものです。その課題解決手段の一つが画像処理技術を活用した外観検査システムの活用です。画像処理技術による判別システムは属人的になりがちな目視検査からの脱却にとどまらず、取得したデータの活用による品質向上、生産性向上の可能性を秘めています。